第100章

電話が繋がった瞬間、安井綺世はその声を聞いても、記憶の中にあるどの顔とも結びつけることができなかった。

安心すべきなのか、それとも懸念を抱き続けるべきなのか、彼女には判断がつかない。

こちらの沈黙が続いたのを不審に思ったのか、相手が「誰だ?」と問いかけてくる。

「突然のお電話、失礼いたします。実は昔の件でご連絡を差し上げました。私の友人と以前、金銭トラブルがあったかと存じますが、覚えていらっしゃいますか?」

相手は一瞬押し黙り、怪訝そうに聞き返した。

「何のトラブルだ?」

だが、即座に否定はしなかった。

代わりに矢継ぎ早に質問を重ねてくる。

「いくらだ? 俺に払えって言うのか...

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