第19章

安井綺世は彼に視線を向けることなく、まっすぐに相馬爺さんを見つめた。

「ちょうど思い出したの。ここに置き忘れたものがあって」

 相馬千冬の視線は、執拗に安井綺世を追っていた。病室の中をあちこち動き回り、散々探した挙句、彼女が最後に手に取ったのは一枚のマスクだった。

 それも、何の変哲もない使い捨てのものだ。

「そんなもののために、わざわざ戻ってきたのか?」

 余計なお世話よ――安井綺世は心の中で毒づきながらも、表面上は笑みを崩さなかった。

「私、未練がましい性格なの。一度使ったものはなかなか捨てられなくてね。悪かった?」

 その言葉は雷撃のように、再び相馬千冬の脳天を直撃した。...

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