第25章

安井綺世は体を板のように強張らせた。

「相馬千冬、私とあなたはもう終わったはずよ」

 離婚届にはすでに判を押した。あとは手続きを進めるだけだというのに。

 彼はまるで蜜月期の新婚夫婦のように、親密に彼女を抱き寄せている。一体どういうつもりなのか。

「爺様の許しが得られるとでも?」

 相馬千冬の声が耳元で響く。チェロの音色のように低く響くその声は、綺世の鼓膜を甘く震わせた。

 綺世は不服そうに布団の中で身をよじり、千冬と向き合った。

 薄暗い間接照明の下、綺世の瞳は星のように鋭く輝いている。

「どうしてよ?」

「あの二人の子供がいる限りな。お前が大人しくしないなら、俺はいつで...

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