第26章

安井綺世は迷うことなく、初幸の提案をきっぱりと拒絶した。

外は激しい雨が降りしきり、気温も低い。もし初幸まで雨に濡れて熱を出してしまえば、彼女一人で二人の病児を看病することなど到底不可能だ。

腕の中の皐雪はすでに高熱でうわごとを呟いており、状況は予断を許さない。安井綺世は直ちに決断を下さなければならなかった。

その時、安井綺世の耳が二階からの微かな物音を捉えた。「カチャリ」というドアノブの回る音。

相馬千冬が書斎からゆっくりと姿を現し、二階から彼らを見下ろしていた。

彼が、家にいたなんて?! 安井綺世の心臓が早鐘を打つ。

相馬千冬は無言のまま、玄関に立つ安井綺世と初幸に視線をやっ...

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