第35章

安井綺世は身支度を整えて階下へ降りた。自分の体に不審な痕跡が一つもないことを確認し、ようやく安堵の吐息を漏らす。

本音を言えば、相馬千冬を問い詰め、昨夜の真相を白日の下に晒したかった。だが、子供たちがいる手前、彼らを巻き込むわけにはいかない。ましてや、自分と千冬の歪な関係を悟られるなど論外だ。

ひとまず昨夜の疑念は棚上げし、二人のために朝食の支度に取り掛かることにした。

ふと見ると、皐雪がキッチンの入り口でモジモジと様子を窺っている。綺世はそれを見かねて声をかけた。

「言いたいことがあるなら、入ってらっしゃい」

子供たちの前では、どうしても冷徹になりきれない。綺世は苦笑しながら手招...

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