第39章

相馬千冬がその言葉を口にした途端、それまでの憶測が全て確信へと変わったかのように、数人の間に漂う空気はさらに重苦しいものとなった。

安井綺世は信じられないといった面持ちで、相馬千冬を見つめた。

ビジネスの戦場であれほど冷静に采配を振るう男が、ことこの件に関しては、なぜこうも理性を失い、妄想に取り憑かれたように振る舞うのか。彼女には到底理解できなかった。

「狂ってるわ。全く話にならない」

安井綺世は掴まれていた手を強く振り下ろし、相馬千冬と小林雪子の手を完全に振り払った。

彼女はそのまま大股でレストランの奥へと歩き出し、その背中はすぐに視界から消えた。

辻本修一は相馬千冬に意味深長...

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