第57章

安井綺世に電話をかけてきたのは、彼女の叔母である安井雅子だった。

彼女は亡き父の実の妹にあたる人物だ。かつて両親が事故で他界し、綺世が天涯孤独の身となった時、唯一の血縁者だった。

相馬家に引き取られ、相馬の祖父の養女となる前、綺世には身寄りがなく、路頭に迷う寸前の時期があった。

その大半を、彼女はこの安井雅子の家で過ごしたのだ。

だが、雅子の家での待遇がどのようなものであったかは、後に綺世が赤の他人である相馬の祖父に引き取られたという事実が全てを物語っている。

食事も衣服も満足に与えられず、飢えと寒さに震えるのが日常だった。雅子は綺世を「お荷物」と呼んで疎み、幼い身に過酷な家事を強...

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