第63章

不意を突かれた安井綺世は、足を滑らせてそのままプールへと傾いた。

視界の隅に、小林雪子の勝ち誇ったような笑みが映る。

電光石火の刹那、安井綺世の心は冷え切っていた。彼女は倒れ込みながらも即座に反応し、自身を突き飛ばした小林雪子の手を、逆手にとって強く掴み返したのだ。

小林雪子の顔に浮かんでいた狂喜が、瞬時にして恐怖へと変わる。

「安井綺世ぇぇ――ッ」

驚怒の叫びも虚しく、二つの水音が重なって響き渡る。

ドボォン、という盛大な音と共に二人は同時に水面を割り、激しい水しぶきが舞い上がった。

近くで遊んでいた人々が、何事かと驚いて振り返る。

水中で二人がもがいているのを見て、ようや...

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