第68章

安井綺世は相馬千冬に詳細を説明する間も惜しみ、安井皐雪を抱きかかえて焦燥しきった声で叫んだ。

「病院へ送って! 急いで!」

相馬千冬も瞬時に状況を察し、何も言わずに車のキーを掴むと、脱兎のごとく駆け出して先導した。

同時に、彼は綺世を気遣うように声をかける。

「焦るな。病院はすぐそこだ。あの子は助かる」

車は夜道を疾走し、通常なら三十分かかる道のりをわずか十分という極限の速さで駆け抜け、病院へと滑り込んだ。

深夜ということもあり、院内は静まり返っていた。

当直の看護師は、ぐったりとした子供を抱く安井綺世の姿を見るなり、即座に声を張り上げた。

「救急はこちらです! 私についてき...

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