第76章

小林雪子の手作り弁当は、見た目も美しく、食欲をそそる彩りだった。ふわりと立ち上る湯気からは、芳しい香りが漂ってくる。

だが、安井綺世にとってそれは、毒薬以外のなにものでもなかった。

彼女は冷ややかな瞳で、弁当箱の中身がゴミ箱へとぶちまけられる様を見下ろした。小林雪子が手間暇かけて作ったであろう栄養満点の食事は、瞬く間に生ゴミへと成り果てる。

あまりに唐突な行動に、小林雪子は反応できず、止めることさえできなかった。

まさか安井綺世がここまではっきりと敵意をむき出しにしてくるとは思わず、彼女は心の中で「恩知らずめ」と悪態をついた。

だが表面上は平静を装い、安井綺世に向けて歪な笑みを貼り...

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