第89章

安井綺世は保温ジャーを手に、病院の廊下を歩いていた。

病室に到着すると、ちょうど辻本修一が看護師にガーゼを交換してもらっているところだった。彼女は流れでそのまま尋ねる。

「経過はどうですか? 最近、何か特に気をつけることはありますか」

看護師は辻本修一のかすり傷を不思議そうに見やり、大した怪我でもないのに家族がそこまで神経質になる必要はない、と言いかけた。

だが、ふと思い直す。もしかすると、目の前の女性は愛する人を心配するあまり、過保護になっているだけなのかもしれない。

看護師は表情を和らげ、微笑ましげに言った。

「本当にお二人は仲がよろしいですね。昨夜もあんなに遅くまで付き添わ...

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