第92章

昨晩、薬を盛られたという証拠を相馬千冬が突きつけて以来、二人は喧嘩別れをしたまま、互いに口を利こうとしなかった。

周囲の人間も触らぬ神に祟りなしとばかりに遠巻きにし、その気まずく冷ややかな空気は、食卓に着くまで続いた。

安井綺世は夕食を作り終えると、相馬千冬を一瞥もしないまま手を拭き、子供たちに声をかけた。

「初幸、遊んでないで。妹の手を洗わせて、ご飯にするわよ」

「うん、分かった」

二人の子供は、安井綺世と一日中一緒にいられた喜びにまだ浸っているようだった。

賑やかに食卓を囲むと、今日の夕食が安井綺世の手作りであることにすぐに気がついた。

二人はここぞとばかりに褒めちぎる。

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