第93章

病室の空気は、死んだように重く、そして気まずかった。

三人は誰一人として言葉を発しない。相馬千冬は手を引くと、余裕綽々といった態おもむきで傍らに立ち、嘲弄の色を浮かべた視線を辻本修一に突き刺していた。その冷ややかな眼差しに、辻本修一の心臓が凍りつく。

だが、今は相馬千冬とやり合っている場合ではない。彼は複雑な心境で安井綺世を見つめた。彼女の顔色はまだ平静を保っているように見えるが、その脳裏には電光石火のごとく無数の思考が駆け巡っているはずだ。

辻本修一は焦燥に駆られ、「僕が君を騙したわけじゃないんだ」と言い訳を並べ立てようとした。

「まだ何も言わないで」

安井綺世は冷徹な声で制止す...

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