第299章

篠宮湊を陥落させるべく、若葉月は入念にムードを醸成していた。

まさにここからが演技の本番というその矢先、人形を抱いた痩せっぽちな小娘が現れ、いきなり彼女を指差して「恥知らず」と罵ってきたのだ。

若葉月のプライドは、瞬く間に逆撫でされた。

裕福な家庭に生まれ、容姿端麗。学生時代から現在に至るまで、男たちに蝶よ花よと扱われてきた「高嶺の花」である彼女が、どこの馬の骨とも知れぬ小娘に指を差され、面と向かって罵倒されるなど前代未聞の屈辱だった。

彼女の表情は凍りつき、浮かべていた涙も瞬時に乾き果てた。

もし目の前に篠宮湊がいなければ、その良きイメージを保つ必要がなければ、今すぐこのガキの頬...

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