第21章 ママ、助けて

平川希も竹本恵梨香に気づき、はっとした様子で、思わず高原賢治に視線を移した。

その淡白な顔に、無意識のうちに淡い憂いがよぎる。

まだ高原賢治と離婚する前、彼女が甘えて一緒に買い物に行こうとねだると、彼は仕事が忙しいと断った。当時、平川希はとても物分かりが良く、自分が彼の仕事を邪魔したのだと思い、自分を責めたほどだ。

それが今、竹本恵梨香の相手となると、仕事終わりに迎えに行ったり、一緒に買い物をしたりと、少しも忙しくなさそうだ。

おそらくこれが、愛すると愛さないとの違いなのだろう。

平川希は冷笑し、すぐにそのわずかな不快感を心の底に押し込め、表情をいつもの淡々としたものに戻す。視線を...

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