第319章 噂が広まる

 高原賢治が歩み寄ってきた。「何事だ?」

 古谷匡史は平川希にちらりと視線を送る。二人が仕事の話をすると察した平川希は、気を利かせてドレッサーの方へと向き直った。

 高原賢治は冷たい目をわずかに細める。

 古谷匡史は慌てて頭を下げた。「社長、やはり……」

 そう言って、古谷匡史は黙って「どうぞ」と手で合図した。

 明らかに平川希を人払いしたい様子だ。

 高原賢治は表情を変えずに眉を寄せ、部屋を出ていく。古谷匡史は平川希を一瞥し、軽く腰をかがめると、ついでにドアを閉めた。

 平川希は古谷匡史のその細かな仕草を見逃さなかった。手にしていたアイブロウペンシルをぴたりと止め、眉を軽く上...

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