第62章 ほどなく、一時間ちょっと待っただけ

松島翼は慌てて眼鏡を押し上げ、あたふたと竹本恵梨香に涙を拭くためのティッシュを渡した。

「俺のせいだ。恵梨香、悲しまないでくれ。君にはその価値がある、十分すぎるほどだ。恵梨香、安心してくれ。俺がいる限り、平川希を科長にはさせない。今すぐ義父のところへ行ってくる」

竹本恵梨香はようやく満足のいく言葉を聞き、目を輝かせた。彼が福院長の婿でなければ、ここまで手間をかけて彼を弄ぶこともなかっただろう。

「それで効果があるのかしら?」竹本恵梨香は彼からティッシュを受け取り、涙を拭いながら尋ねた。

「恵梨香、もう一度俺を信じてくれ。この件は俺に任せろ」松島翼は胸を叩いて保証した。

竹本恵梨香の...

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