第74章 高原賢治はこの夫としての役割を全く果たしていない

この前の凌太と由佳が高原家に乗り込んだ一件で、平川希が高原賢治を誤解し、その後に謝罪してわだかまりが解けてからというもの、二人の間の関係には微妙な変化が生じていた。

彼女は、高原賢治に対して以前より少し信頼を置くようになっていた。

高原賢治に子供たちを奪う意思はなく、ただ父親として会いたいだけなのだと、平川希はその理由を受け入れた。そのため、高原賢治が凌太と由佳に会うことへの以前のような抵抗感はなくなり、止めることもしなくなった。

平川希は眉をわずかに上げ、少し離れた場所に停まっている黒い車に視線を送る。今の彼女の心は穏やかで、優しく凌太の髪を撫でた。

「うん、行ってらっしゃい」

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