第236章

「幸い、擦り傷程度で大したことはない」

古村陽平は事を大きくしたくなくて、古村家の専属医をマンションに呼んだ。

額を少し擦っただけで、ほかに目立った外傷はない。医者もそう判断したらしい。

「こちら、用意しておいた薬です。古村奥さん、恐れ入りますが社長に塗って差し上げてください」

「二日ほど安静にしていれば問題ありません」

専属医の言葉に、江崎鏡は本当は引き受けたくなかった。けれど古村陽平が自分をかばって怪我をしたのは事実で、断れる立場でもない。

「……わかりました」

医者を見送り、高橋さやかも慌ただしく出勤していった。

家の中はほとんどが備え付けの家具と生活用品で、鏡が片づけ...

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