第281章

「古村陽平、何してるの! 離して!」

その瞬間、江崎鏡にははっきりわかった。古村陽平が強い腕で彼女を抱きすくめている。熱い息が、彼女の細い背中にふうっと吐きかけられては吸い込まれ、二人の距離は――あまりにも生々しいほど近かった。

「鏡……お前、どれだけ俺が嫌いなんだ?」

酒の勢いに押されて、古村陽平は胸の奥の言葉をそのまま吐いた。

けれど江崎鏡は、言葉を失う。古村家で数えきれないほど悔しい思いをしてきたのに、それでも古村陽平への想いだけは、何年経っても変わらなかった。どうしてなのか、自分でもわからない。憎もうとしたことだってある。

――でも、そんな簡単に憎めるはずがない。

彼が痛...

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