第367章

アリスは血みどろとまではいかない。だが、少なくとも意識を失っていた。

ぼさぼさの髪を垂らしたまま床に倒れ、傍らでは高槻おじいさんが肩で息をしている。手に握られているのは麻縄――やけに太い、太い麻縄だった。その光景を目にした江崎鏡は、背筋にぞわりと鳥肌が立つのを止められない。

鏡が来たのを見ると、高槻おじいさんは深く息を吐き、いったんソファに腰を下ろして休んだ。次いで麻縄を放り出し、苦笑を浮かべて詫びる。

「悪いな、鏡。こんな遅い時間に呼びつけて」

鏡が二歩ほど近づくと、血の匂いがいっそう濃く鼻を刺した。

ごくり、と唾を飲み込む。間近で見るアリスの頬には赤い血の筋が走り、そこから小さ...

ログインして続きを読む