第12章

「飯、楽しくなかったか?」と彼は訊いた。

新谷音羽が、ほとんど聞こえないほど小さくため息をつく。蒼井沢言はそれだけで察し、上着を手に取った。

「下に来い。送る」

「……大丈夫です」新谷音羽の声は鼻にかかっていて、疲れが滲む。「もう解散しましたから」

「誰が解散だと言った」

淡い口調。なのに、胸の奥まで貫く重さがあった。

「君が主役だ。君が帰ってないなら、終わりじゃない」

新谷音羽は言葉を失う。

「大衆酒場のチョイスは正解だった」蒼井沢言の声が続く。「ショーカ・ジュエリーのデザイナーは、プライドが高い。目も心も。5つ星ホテルに連れていけば、当然だと思うだけだ。料理がどうだの、個...

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