第145章

彼はあくまで軽く流し、彼女に余計な心配をさせまいとした。

画面越しに、ふたりは黙ったまま見つめ合う。別れてからまだ数時間しか経っていないのに、恋しさだけがどうしようもなく膨らんでいく。

そのとき――新谷音羽の背後のドアがふいに開いた。

ラフなパーカー姿の若い男が、すっと部屋に入ってくる。背筋の伸びた体つき。端正な顔立ちに、どこか少年っぽい朗らかさが残っていた。手には、切り分けたフルーツの皿。

「姉ちゃん、果物。食べてから寝なよ」

そう言いながら、男はごく自然に、果物を新谷音羽の手元のテーブルへ置いた。

蒼井沢言の瞳にあった柔らかさが、一瞬で凍りつく。

黒い目が画面の向こうの見知...

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