第19章

蒼井沢言の視線が、星野結月の顔を淡く撫でるように滑り――すぐに新谷音羽へ戻る。

彼は腕を伸ばし、テーブルの端に置かれた彼女の手の甲に、自分の手を重ねた。

大きくて温かい掌が、氷みたいに冷えた指先まで包み込む。

新谷音羽の身体がびくりと強張る。反射的に引こうとしたが、逆にぎゅっと握り込まれ、逃げ道を塞がれた。

「妹じゃない」

蒼井沢言がようやく口を開いた。声は凪いだままなのに、静かな湖へ巨石を落としたみたいに、空気だけが沈む。

「……俺の奥様だ。蒼井音羽」

奥様。

その言葉が、はっきり星野結月の耳へ届いた。

完璧に作られていた笑顔が、ぴしりと固まる。目の奥の色が一瞬で変わり、...

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