第39章

新谷音羽は眉間に深い皺を刻んだ。昨夜の甘い余韻と、今朝の騒ぎがぐちゃぐちゃに絡み合っていた心は、次の瞬間、ひやりと冷えた嫌悪に塗り替えられる。

通話ボタンをスライドさせる。声は驚くほど平坦だった。

「……何?」

「電話に出ることは覚えてたか。お前、父親のことナメてんのか?」

新谷邦夫の図々しい怒鳴り声。向こうはやけに騒がしい。麻雀牌をかき混ぜるような音もする。――どうせまた、あの場所だ。

「ニュース見たぞ。いいご身分だな。蒼井夫人だって? 高い枝に止まっちまって、もう羽が生え揃ったとでも言いたいのか?家のことも放っといて!」

笑えてきた。喉の奥で、冷たいものが鳴る。

「家? 私...

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