第42章

新谷音羽は従業員専用通路の扉を押し開けた。中は細い廊下で、キッチンと休憩室へ続いている。だが、さっきのウェイトレスの姿はどこにもない。

一通り探しても手がかりはゼロ。なのに胸の奥のざわつきだけが、じわじわと膨らんでいく。

あの店員の目に宿っていた焦りと、何かを伝えたがる気配――ただの気のせいで済ませられるものじゃない。

前に起きた「盗作」の件が脳裏をよぎった瞬間、音羽の神経はピンと張りつめた。

ボックス席へ戻ると、顔にはすでにいつもの平静が貼りついていた。田村彰正はペンを手にしたまま、ずっと待っていたように見える。

「新谷さん。契約書、問題なさそうですし……じゃあ、サインしましょう...

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