第52章

新谷音羽は深く息を吸い込んだ。なにかを決めたみたいに、この数日ずっと胸の奥に押し込めていた言葉を、ようやく吐き出す。

「私たち、もともと政略結婚だよね。最初から、協力関係だって決めてた。あなたが責任を果たして私を守って、蒼井家の奥様としての体面を整えてくれる。それは間違ってない」

そこまでなら、きっと落ち着いて言えるはずだった。

けれど最後に近づくほど、声は自分でも止められないほど、かすかに震えてしまう。

「……私が、自分の立場を履き違えた。踏み込んじゃいけないところまで踏み込んで……あなたに、期待しちゃいけない期待をしたの」

そうだ。

心を動かしたのは自分で、取引のルールを先に...

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