第57章

周囲の空気が、すっと冷えた気がした。

さっきまでの熱気はどこかへ引いて、場の雰囲気だけが、妙にひりつく。

同僚たちは顔を見合わせる。蒼井社長の不機嫌と距離感を、誰もがはっきり読み取っていた。

新谷音羽も、果実酒でふわふわしていた頭が、その瞬間だけ少し冴える。

品川玲子の、やけに熱っぽくて、わざとらしい身のこなし。そこに混じる小さな悪意を、酔いの甘さが一気に薄めていった。

蒼井沢言は品川玲子を一度も見返さない。

そのまま音羽へ視線を移すと、凍っていた眉目がふっとほどけ、声まで柔らかくなった。

「もう十分だ。帰ろう」

汚れた上着を脱いで腕にかけると、ごく自然に音羽の肩を抱き、立ち...

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