第5章

松野里奈視点

階下から聞こえる、バーベルがガチャンとぶつかる音で目が覚めた。

午前七時。土曜の朝っぱらからトレーニングする人なんている?

バスローブを羽織り、廊下をそろそろと歩く。自宅ジムのドアが全開になっていた。おかしい。涼真はいつも閉めるのに。

その理由が、すぐにわかった。

彼がベンチプレスをしていた。上半身、裸で。

私の足は、その場でぴたりと止まった。

松野涼真は、客観的に見てとんでもない美形だ。それはわかってる。三年間、ずっとわかっていたこと。それでも時々、こうして不意にくらってしまう。

窓から差し込む朝日が、彼の身体のあらゆる線を捉えていた。広い肩か...

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