第346章 金持ちの人

親子ふたりは、まるで熱した鍋の上を走り回る蟻のように右往左往していた。焦りで胸はいっぱいなのに、どうしていいのかまるで見当がつかない。

杏里はふっと笑う。

「今いちばん大事なのは、とにかく金を作ることよ。向こうが欲しがってるのは金なんだから。自分の周りをよく考えてみなさい。いちばん金を持ってるのは誰かって」

その一言が、眠っていた頭を一気に覚まさせた。

中山誠子と安田大奥様の脳裏に、同時にひとりの人物が浮かぶ。

青山光。

もちろん、青山雅紀も金は持っている。だが彼だけは、どうあっても逆らえない相手だった。

「そうよ、そうだったわ。今、家の骨董だの書画だのは全部、青山光の手元にあ...

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