第512章 遺産

このお婆さんは、生まれてからずっとこの家に住んできた。ここは誰もが羨む高級住宅街で、今さら空きなんてほとんど出ない。

 だからこそ、金も権力もある連中はこぞってこの家を狙っている。隣近所の顔ぶれが違う、そんな特別な一角だからだ。まさか青山聡が、ここまで下劣な真似をするとは思ってもみなかったけれど。

 青山光は、不安を抑えきれないままお婆さんの腕をぎゅっと握る。

 嫌な予感は当たった。お婆さんは怒りで胸を大きく上下させ、額には青筋が浮かび上がっている。必死にこらえているからこそ意識を保っているが、そうでなければとっくに気を失っていてもおかしくなかった。

 お婆さんがなかなか口を開かない...

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