第30章

今となっては、無理やり流された15億ドルさえ、すべて二ノ宮原子の手に渡ったのではないか――そんな疑念まで芽生えていた。

確かめる必要がある。

そして、取り返さなければならない。

二ノ宮正樹は踵を返し、精神病院を後にした。

一方、院内では――。

院長は胸を撫で下ろすようにして、二ノ宮正樹が来たことを薄原川人へ報告する。

受話器の向こうから、低く沈んだ声が返ってきた。

「ご苦労」

「とんでもございません。薄原様のお役に立てるなら光栄でございます」

院長がそう言い終えるより早く、通話は切れた。

二ノ宮正樹が精神病院に来たという情報は、マスクの男の口を通じて、二ノ宮原子のもとへも...

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