第47章

二ノ宮原子は口元をわずかに引きつらせた。男は穏やかに微笑み、手を差し出してくる。

「はじめまして。温水洋一です。これからよろしくお願いします」

原子は眉をひそめ、トンボが水面に触れるみたいに軽く手を合わせただけで離した。

車に乗るなり、温水洋一は止まらない。窓の外を指しながら、校内の景色を延々と紹介してくる。

「俺、この大学なんですよ」

言い終えたところで、彼はふっと言葉を切った。空気が一瞬だけ、気まずく沈む。

――自分だけが喋っている。相手がどう感じるか、まるで考えていなかった。

「着きました」

スーパーカーがサーキットの脇で停まる。見渡す限りの大きなコース。金に糸目をつけ...

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