第57章

二ノ宮薫子は、あの日以来ぱたりと表舞台から姿を消していた。

「私が掴んでる話だと、二ノ宮薫子はいま二ノ宮家の別荘にいる。ただ今日、誰かが薫子を買い物に誘い出したらしい」

二ノ宮原子が車のドアを開けた。陸田運が止める間もなく、彼女はもう外へ降りている。

星光大厦の正面入口へ向かう。さっきは気のせいだと思ったが、どうにも見覚えのある後ろ姿が視界の端を横切った。

精神病院で、少しだけ言葉を交わしたことのある人間。

だが、その影はすぐに人波へ溶け、顔までは見えなかった。

そのときだった。手首を、ぎゅっと掴まれる。

二ノ宮原子が振り向くと、鈴原そらが立っていた。やつれた目が、やけに生々し...

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