第60章

彼女は名誉も利益も欲しくなかった。そんなものは、より多くの人間の算段を呼び寄せるだけだ。

だから、全部断る。

古崎小麦は教室の前で待っていた。二ノ宮原子が中から出てくるのを見つけると、慌てて背筋を伸ばす。

「アンジェル、こんにちは。前に……古崎小麦です。あのときは、全校のみんなの前で謝りました」

二ノ宮原子は眉を上げた。

「用は?」

古崎小麦は顔を真っ赤にして、こくりとうなずく。

その目には、羨望と、それ以上に心配が滲んでいた。

「アンジェル、友達になりたいの。もっといろいろ教わりたい。あなた、すごく優秀だから」

すごい、なんて言葉では足りない。

古崎小麦も以前は天才だと...

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