第146章

早村青美は病室のベッドに横たわっていた。髪はぐしゃぐしゃ、化粧は崩れて頬に筋を引き、目も当てられないほどみすぼらしい。

鏡に映った自分の顔を見た瞬間、かっと血が上ったのだろう。青美は鏡を床に叩きつけた。ガシャン、と乾いた音が病室に響く。

『どういうことよ! なんで私がアレルギーなんか!』

部屋の隅には、早村寧美が小さく立っていた。俯いたまま、何も言わない。

誰も気づかなかった。寧美の指先に、淡い黄みがかった粉がほんのわずか残っていることに。

青美は病院で半日以上も騒ぎ立て、ようやく落ち着いた。

病室の外、廊下で川崎佑哉と江原安美が声を潜めて話す。

『本人が医者のはずなのに、急に...

ログインして続きを読む