第156章

稲子がちょこちょこと短い足で駆け込んできた。手には白い封筒を握りしめたまま、二人の前まで小走りで来て言う。

『ママ、執事のおじさんがね、変な手紙が来たから川崎おじさんに見せてって』

江原安美は反射的に川崎佑哉から距離を取ると、何でもないふりで机の上を片づけ始めた。けれど耳の付け根に残った熱だけは、なかなか引いてくれない。

川崎佑哉の瞳に浮かんでいた甘い色はすっと消え、代わりに困ったような笑みが滲む。せっかくの流れをぶち壊した小さな侵入者を見ても、怒る気にはなれなかった。

彼は少女の手から封筒を受け取る。

封筒はありふれた白いクラフト紙。差出人の名前もなく、切手もない。端が少しだけ皺...

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