第166章

林原澪が川崎家の実家へ戻ると、江原安美は稲子を連れてリビングで川崎のお爺さんと将棋を指していた。

「安美さん」

靴をそろえて上がってきた林原澪は、すでにお行儀のいい笑みを顔に貼りつけている。

江原安美はちらりと顔を上げた。

「今日は早かったのね」

「うん」

林原澪は安美の隣に腰を下ろし、しばらく黙り込む。言い出せずにいるのが見て取れた。

江原安美が気づいて声をかける。

「何かあった?」

林原澪は唇をきゅっと噛み、覚悟を決めたように口を開いた。

「安美さん……言いにくいんだけど。今日、会社で噂が立ってて……私と川崎様が付き合ってるって」

江原安美の指が、駒を置く手元でわず...

ログインして続きを読む