第169章

「安美……無事で……よかった……」

川崎佑哉はかすかに笑い、手を伸ばして彼女の頬に触れようとした。

江原安美は両手で彼の胸の傷を押さえつける。だが血は指の隙間からどくどくと溢れ、塞いでも塞いでも止まらない。

「川崎佑哉……川崎佑哉、動かないで……!」

震える声。涙が彼の頬に落ちた。

佑哉は半分だけ目を開け、彼女を見つめる。唇がわずかに動いた。何か言ったのだろう。

けれど、安美には聞こえない。

川崎旭の怒号と、警官の叱声が、佑哉の声をかき消した。

佑哉の手が、どさりと重く落ちる。

耳の奥が、ぶわんぶわんと鳴った。ほかの音が、全部遠のく。

警官に身体を支えられ、医師たちが佑哉...

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