第187章

江原安美はふと何かを思い出し、顔を上げて陸田明広を見た。声音には、抑えきれない焦りが滲む。

『明広、今……今のうちに、あいつに催眠をかけられない?』

これ以上ない好機。――そして、彼に治療を受けさせる唯一の機会。

だが陸田明広は、その言葉を聞くなり首を横に振った。表情は硬い。

『ダメだ』

『どうして?』

江原安美は呆然とした。瞳の光が、すっと落ちる。

『催眠療法は、患者の意識がはっきりしていて、本人が自発的に協力する状態でないと成立しない』

陸田明広は彼女を見て、落ち着いた口調で噛み砕くように説明した。

『今の彼は薬がまだ抜けきってない。意識が曖昧で、催眠に必要な反応が取れ...

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