第21章

拒む言葉が喉の奥で何度も転がったのに、結局、江原安美は口にできなかった。

この三年間――川崎お爺さんが、どれほど細やかに気にかけてくれたか。

この家で、安美が唯一「温かい」と思えたもの。

それでも。

心も目も、最初から他人に向けたままの男と、これからも一緒にいるなんて耐えられない。

「お爺さん、私……」

安美は視線を落とし、指先をきゅっと絡めた。迷いが、どうしても消えない。

こんなふうに引き延ばしていたら、いずれお腹のことも――隠しきれなくなる。

「ひと月だけでいい」

川崎お爺さんは安美の手を包み込む。掌がじんわりと温かい。

「ひと月経っても離婚したいと言うなら、わしがあ...

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