第32章

江原安美は着信画面を見た瞬間、出る気が失せた。

けれどスマホは執拗に鳴り続ける。両親も気づいて、視線が集まる。

母が首をかしげた。

「安美、さっきからずっと鳴ってるけど……急ぎの用じゃないの?」

安美は首を振る。

「大丈夫。迷惑電話だよ」

しかし着信音がうるさくて、会話どころじゃない。結局、安美はベランダへ出て通話を取った。

「安美、そっちはもう終わったのか?」

川崎佑哉の声は焦りを含んでいる。

「いま迎えに行く」

「いらない」安美は氷みたいに言った。「もう帰るところだから」

「どこにいる。迎えに行く」

「いらないって言った」

「江原安美」佑哉の声が低くなる。「どこ...

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