第59章

江原安美はふっと振り返った。

少し離れた場所に鈴村千雪が立っている。全身ブランドで固め、にこやかに笑ってはいるものの――その笑みは、どう見ても作り物だった。

江原安美は取り合わず、黙って服を選び続けた。

鈴村千雪が寄ってきて、彼女の手元を覗き込む。

「誰の服を買うの? それ、安くないよね。いまのあなたに買えるの?」

江原安美は服を棚に戻し、正面から見据えた。

「鈴村千雪。いったい何がしたいの?」

「べつに。ちょっと心配してあげてるだけ」

千雪はやさしく笑う。

「離婚したんでしょ? 手元のお金、節約しないと。使い切った挙げ句、厚かましく佑哉にねだるなんて――見てられないし」

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