第53章 昔のこと

家に戻ると、結城凝香はふいに記憶の奥へ沈んでいった……。

「凝香ちゃん、ゆっくり。転んだら危ないわよ」

母性に満ちたやさしい声。女は四歳の小さな少女へ視線を落とし、困ったように、それでも愛おしさを隠せない笑みで、駆け寄ってきた身体をそっと受け止めた。

少女は手に握っていた野の花を差し出す。

「ママ、はい」

女は花を受け取ると、少女の頭をなでた。

「いい子ね」

そこへ、鍬を提げた朴訥そうな男が歩いてきた。眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言う。

「そんな甘やかしてどうする。拾ってきた子だろ。こっちに懐くわけがねえ。子どもまで連れてきてくれるって話だったのに、もう一年以上だぞ。お前...

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