第58章 早く彼女を助けて

結城凝香は玄関先にしばらく立ち尽くしてから、ようやく部屋へ戻った。

紀藤瑛介はすでにソファへ座り直している。温井賢人が来たことについて、何かを尋ねる気配もなかった。

結城凝香もまた、口にしない。

二人はまるで示し合わせたように、さっきの「贈り物」の一件を、最初から存在しなかったことにした。

「……お前、養父と何があった」

沈黙を破ったのは瑛介だった。結城凝香をまっすぐ見据え、低い声で続ける。

「なんであいつは人前で『恩知らず』なんて言った? どうして面倒を見ない。上の連中、みんなその話で持ちきりだ」

社交界では、結城凝香が恩知らずだと決めつける声が渦巻いている。瑛介は、その「間...

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