第10章

翔太は黙り込んだまま、胸の内だけが波立っていく。

幼いころから和泉静留のそばで過ごしてきた。彼女がどれほど苦労してきたかも、夜更けに誰にも見られないように流していた涙も、翔太は知っている。

あれは、長男を想っての涙だ。

そして目の前の相手は――その兄かもしれない。

平岩景也もまた考え込んだ顔をしている。翔太の中で、もう腹は決まっていた。

周囲をさっと見回し、誰も近づいていないのを確かめてから、翔太は平岩景也の耳元へ身を寄せ、囁く。

「手がある。俺たち、入れ替わろう」

その一言に、平岩景也は目を見開いた。

「え……そ、そんなの……どうやって?」

言葉が上ずる。

「もうすぐ父...

ログインして続きを読む