第141章

平岩空人は、長く息を吐いた。

それでも寝室のほうへ不安げに視線をやり、和泉静留の手を取る。

『ここは話す場所じゃない。ついてきて。外で話そう』

静留が買った部屋は、ワンフロアを丸ごと使うタイプだった。この階の住人は彼女ひとり。

マンションのセキュリティ意識も高い。エレベーターはカードキーがなければ乗れず、行き先階を選ぶとその階にしか止まらない。

つまり、この階へ上がって来られる人間はいない。

階段も同様で、この階の防火扉は電子錠で施錠されている。

空人は静留の手を引き、外のバルコニーへ出た。真正面から彼女を見つめ、誰にも知られていない過去を語り始める。

あの年、彼はまだ大学を...

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