第15章

笛の合図が耳に届いた瞬間、平岩空人は護衛のリーダーにちらりと目配せした。男は即座に察し、足音を殺して裏庭へ回り、そのまま塀を越えて姿を消す。

和泉静留の呼吸は乱れていた。けれど、彼女が姿を見せた途端、空気のどこかに甘く清い梔子の香りが混ざった気がした。

「……帰ってきたのか」

庭先で、空人は車椅子を押しながら、彼女のいる方へ一歩ずつ近づいていく。

目元にはまだ包帯。だが五感が鋭いのか、距離も方角もほとんど狂わない。

「うん。翔太と華蓮は?」

静留は大きく息を吸って吐き、呼吸を整えながらも、心配そうな視線はすでに家の中へ向いていた。今日、連れて行かれていた時間が長い。あの子たちが不...

ログインして続きを読む