第19章

殡儀館の空気には、いつも消毒液とホルマリン、それに言葉にしがたい冷たい静けさが混じった匂いが漂っている。

夕陽の残光が高い窓から差し込み、調度品の影をやけに長く引き伸ばして、場違いなほどの不穏さを足していた。

和泉静留は、手のかかった遺体修復をようやく終えたところだった。額にはうっすら汗。神経を張りつめていたぶん、疲労が遅れて押し寄せてくる。

マスクを外すと、顔色が少しだけ青い。

本来なら今日の業務はここで終了。あとは退勤するだけ――のはずだった。

しかし、遠くで上がった騒がしい声が、だんだん近づいてくる。殡儀館に常につきまとう厳粛さを、乱暴に引き裂くような喧噪だった。

「館長に...

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