第26章

和泉静留は、くたくたに疲れた体を引きずるようにして家の扉を開けた。

玄関をまたいだ途端、離れていた時間を埋めるみたいに、二つの小さな影がぱたぱたと駆けてくる。子ども特有の甘い匂いがふわりと広がり、どこか空っぽだった胸の内を、たちまちいっぱいにしてくれた。

「ママ!」

鈴みたいに澄んだ、あどけない声がほとんど同時に重なる。

次の瞬間、和泉静留は両脚にずしりと重みを感じた。華蓮と平岩景也が、片方ずつ彼女の脚にぎゅっとしがみついている。作りものみたいに愛らしい顔を見上げる瞳には、慕わしさと甘えが隠しようもなくあふれていた。

そのひと声だけで、胸に垂れこめていた靄が少し薄らいだ気がした。

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